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東京さくらトラム・東武アーバンパークラインが失敗した本当の理由

東京さくらトラム東武アーバンパークラインといえば百合子誰かさんがゴリ押ししているものの全く定着しない路線愛称の代名詞として広く知られています。

これらの名称はなぜ定着しなかったのでしょうか。ダサいから?名前が長いから?

では逆にどのような路線愛称なら利用者に受け入れられるのでしょうか。

私の答えは、「基本キラキラネーム以外なんでもOK、ただし既存路線を改名するにはセンス以前に既存名ではダメな相応の理由が必要」です。

この記事では、既存路線を改名できる条件について触れたあと、路線愛称の宝庫であるJR西日本の各線区を見ていきます。

 

↓この記事を書いたきっかけ

 

 

既存路線を改名できる条件とは

既存路線に新たな名称を付するハードルは高いです。既存名を押しのけるだけの説得力がないと利用者に浸透しないからです。
そして利用者を説得する前提条件として「既存名を変えなければならない合理的な理由」が必要になります。この段階で、「別に現名称でよくない?」と思われるようでは新名称の良し悪しの判定にすら進めません

つまり、【新しい名称が定着するか否かの鍵は新名称ではなく現在の名称が握っている】のです。百合子が「やれ」と言ったから変わるものではないのです。百合子がどんなにセンスに溢れた素晴らしい愛称を思いついたとしても都電は都電ですよね?

次項では鉄道会社の命名か自然発生的な呼称かによらず、「(既存の)路線名と異なる線区名、愛称が浸透している、したケース」について具体的に分類していきます。



1.路線名と運行形態の不一致


路線延伸、他線開通や直通運転による運行系統の変化などによって現行の路線名が馴染まなくなったり、複数の路線が一体的に運行されるようになった場合です。

(例)

(旧々)東急田園都市線→(現)大井町線・(旧)田園都市線

(旧)田園都市線新玉川線→(現)田園都市線
池袋発着の東北・高崎線+α→湘南新宿ライン
国鉄三江北線・三江南線→三江線
神戸市営地下鉄西神延伸線西神線・山手線→西神・山手線
東海道線湖西線北陸線信越線・白新線羽越線奥羽線日本海縦貫線(JR貨物)


2.他路線に短距離だけ乗り入れる場合


路線Aの多くの列車が路線Bに乗り入れているときに線区AとBが併走しているとみなすケースです。路線Aの立場から見るとケース1の一種と見ることもできます。
(例、=で結ばれた駅間は正式には他路線に乗り入れている)
高崎線(東京・上野=大宮~高崎)
近鉄奈良線(難波=上本町=布施~近鉄奈良)
武蔵野線(東京・海浜幕張西船橋~府中本町)


3.路線名と線区の性格の不一致


新線開通で長距離列車を失い都市近郊路線となったり、あるいは逆に広域輸送ルートに組み込まれたことによって路線の持つ使命と路線名が乖離した場合です。多くがケース1、2も併発しており特に1とは区別も難しいことからケース1の一種と見てもよいと思います。
(例)
東北新幹線開通後の東北本線上野口→宇都宮線
(一地方のローカル線にすぎない)津軽線(青森~蟹田)・江差線(木古内以北)+海峡線→津軽海峡線
津軽海峡線(青森~蟹田)→津軽線
蟹田三厩木古内江差津軽海峡線時代も旧名称のままであり、北海道新幹線開通後は青森~蟹田間が津軽線に戻されたことからも、ローカル線の看板と北海道連絡を担う幹線の実態とのギャップが問題であったことがわかります。
宇野線本四備讃線(新線)・予讃線瀬戸大橋線


4.路線名に冠しているものがなくなるなど、現名称が著しく不適当


西鉄宮地岳線貝塚線
富山ライトレール線→富山港線
↑(株)富山ライトレールが吸収合併されたことはどうでもよく、市内電車の将来を鑑みて富山駅の北側だけが「ライトレール」を名乗ることが不適当とされたのではないでしょうか。
など

花咲線は花咲駅が由来ではないので花咲駅が消えても改称の必要性は薄いです。また駅名の場合それ自体が半ば地名と一体化してしまうことがあるため、東急の都立大学駅のように悪質な詐欺駅名となってもそのままのケースがあります。
将来留萌線が留萌に行かなくなったらどうするんでしょうか…?


5.幹線の一部とされている分岐線


分岐線の利用者が限られるためか通称はそこまで広まらないことが多い気がします。
(例)
東海道線(大垣~美濃赤坂)→美濃赤坂
営団地下鉄丸ノ内線(中野坂上方南町)→方南町支線


6.他線区と区別をつけるための呼び分け


(例)
中央線・総武線の快速・各駅停車
総武線(三鷹~千葉の各駅停車)、中央線(オレンジ色の電車)、総武線快速(東京に行くやつ)
「地下鉄」→営団銀座線
「新幹線」→東海道新幹線
複数の路線が走る地方で散見される「電車」「汽車」「JR」等の通称

 

7.著しい輸送改善によって従来のイメージを完全に払拭した場合

 

(例)

札沼線学研都市線学園都市線*1

富山港線富山ライトレール

 

8.「◯号線」など仮称感漂う路線名


東京臨海高速鉄道臨海副都心線→りんかい線
東京臨海新交通臨海線は当初から一貫して「ゆりかもめ」と呼ばれており正式名称はほとんど知られていないのでケース4や6ではないと思います。
地下鉄12号線→都営大江戸線

 

9.1~8の複合


というか複合してない事例のほうが少数派ですね。

 


新名称が根付いた路線はそれが求められていたからであり、これからも必要な線区に必要な名前を与えてやれば自ずと浸透するでしょう。

なお海外の場合何かの記念として広場や通りや国際空港の名前を偉人の名前にサクッと変えることがわりとよくあります。こんがらからないんですかね?

 

東京さくらトラム東武アーバンパークラインが普及しない理由

上記を踏まえると、「名前を変える必要がないから」の一言に尽きます。まともな名前でも浸透し得ないので「キラキラネームだから」は理由にはなりません。

 

JR西日本の路線愛称


アーバンネットワーク


JR西日本アーバンネットワーク各線へ手当たり次第に愛称をつけ旧名称はヴォルデモート並みにNGワード扱いすることで有名です。
しかし2章を踏まえるとこれは決して本社の趣味ではなく、阪急への当てこすりというだけでもなく、きちんと合理的な理由があったことがわかります。

 

また単なる言葉遊びではないため、多くの線区に愛称を付けつつも変える理由のない大阪環状線阪和線は改名していないことも重要なポイントです。



ところが…


いつしか改名の理由が忘れ去られ結果だけが残ったのか知りませんが「面白い人が面白いことをする」フェーズは終わってしまい、JR西日本は不要な路線愛称を乱造するようになってしまいます。

四国連絡ルートから外れた宇野線茶屋町以南を「宇野みなと線」にしたのはまあ擁護できます(瀬戸大橋線区間では宇野線NGワード化しているのでいまさら残った宇野線を呼び分ける必要性はそこまで大きくない)。しかし万葉まほろば線桃太郎線は何がしたいのかわかりません。しかも形だけパクっているので案内の必要性の高い桜井線や吉備線はきっちりヴォルデモート化しています。悔い改めて。

 

 

(おまけ)新路線に愛称を付ける場合



新規路線の愛称は多少攻めても受け入れられる可能性があります。既存名を押しのけるだけの説得力を持つ必要のある既存路線の新愛称と違い、新線を何と呼べばいいのか利用者もわからないからです。長すぎる名前だったとしてもライトノベルのタイトルのように日本人は適当に略称をつけてくれます。
ただし愛称がキラキラしすぎて受け入れられなかったときのためにまとも~ちょいキラレベルの名称も別途設定しておくことが望ましいです。正式名称がキラキラネームだと名称の混乱が起きる可能性があります。

具体例
多少攻めた新規路線の愛称が受け入れられた例(正式名称)
ゆりかもめ東京臨海新交通臨海線
ゆいレール沖縄都市モノレール線
みなとみらい線みなとみらい線
リニモ東部丘陵線

愛称は受け入れられなかったが正式名称が浸透したため助かった例
ゆめはんなけいはんな線

正式名称までキラキラしている例(地元民ではないのでわからないが、「汽車」「電車」などと呼ばれている例もあると考えられる)
えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン

名前が長いが略称が浸透している例
つくばエクスプレス線→TX
えちごトキめき鉄道(会社名)→トキ鉄(地元民に浸透してるかは不明)

 

 

 

じゃあコレはなんでダメだったの?

国電改め「E電」

ダサすぎたんじゃないでしょうか(適当)。

 

 

 

↓かさ増しする前のやつ

 

サムネ用



https://twitter.com/HDkurobo0408/status/1540661337633988608?s=20&t=xCfIVA96s97FAgH_GV_qjg

 

 

https://twitter.com/HDkurobo0408/status/1540661337633988608?s=20&t=xCfIVA96s97FAgH_GV_qjg

*1:ただし新十津川まで学園都市線呼びしたのは謎