くろログ

【大丈夫?】東京メトロ24時間券、Amazonで販売開始

初の時事ネタな気がします。

 

2022年11月29日、東京メトロは自社のフリーきっぷ「東京メトロ24時間券」のAmazonでの販売を開始しました。

公式プレスリリース「東京メトロ24時間券をAmazonで今日から販売開始!」

www.tokyometro.jp

私はきっぷオタではありませんが(←超重要)、いくつか気になったことがあったので書き残しておきたいと思います。

 

 

プレスリリースの概要

販売形態

上記プレスリリースの概要を箇条書きします。

    • 24時間券をAmazon.co.jp*1で販売開始
    • 現時点では50枚セット(3万円)および100枚セット(6万円)を販売
    • 有効期限は6ヶ月
    • 乗車券の通年ネット販売は初の試み
    • 在庫保管、配送はFBA(フルフィルメント by Amazon)を活用
    • 今後も小分け販売などラインナップを充実させる予定

販売ページ(※ノンアフィです)

東京メトロ 東京メトロ24時間券(前売り) 大人50/100枚セット 

https://www.amazon.co.jp/s?me=A3FPG4CTSJAMPN&marketplaceID=A1VC38T7YXB528

東京メトロ」の出品者ページ

https://www.amazon.co.jp/sp?ie=UTF8&seller=A3FPG4CTSJAMPN&asin=B0BH8KZBM1&ref_=dp_merchant_link&isAmazonFulfilled=1

プレスの補足・販売目的の推察など

この度Amazonで販売されるのは、前売り用24時間券を単に50枚or100枚束にしただけのもので、まとめ買い割引などは一切ありません。図柄などについては明言されていませんがおそらく定期券うりばで発売されている通常デザインでしょう。送料は無料のようです。

リリース本文でわざわざAmazonビジネスの活用法に言及していること、リリースの添付画像(下に引用)、一個人では6ヶ月の有効期間内に使い切るのが困難な量のみ販売することから24時間券を外回りで大量消費する事業者をメインターゲットとしていることがわかります。

東京メトロが想定する主な活用法。上記プレスリリースより引用。

FBAの出品、在庫保管、発送手数料は少なく見ても1割以上の手数料が必要となります。メトロがAmazonに多額の手数料を支払ってでも外部チャネルで販売を開始した理由は不明ですが、旅客の利便性を重視した、定期券うりばで数百枚単位で24時間券をまとめ買いする客の対応に手間がかかっているなどの可能性が考えられます。

なお「乗車券をオンラインで通年販売するのは当社初の取り組み」とあるのは、期間限定ではあるものの記念デザインの24時間券をメトロの通販サイトでたびたび販売、受注生産しているためです。

 

 

個人的に気になったこと

有価証券のFBA出品は禁止されているはずでは?

まず気になったのがこれです。

Amazonセラーセントラルの「FBA禁止商品」のページには、「以下の商品は、FBAで出荷することはできません。」として以下の内容が挙げられています。

金券類

金券類(商品券、プリペイドカード、日銀券、切手、収入印紙、イベント入場券等、それ自体に金銭的価値がある証票、カード、数字・文字によるコード等)は、以下の例外を除き、出品できません。

例外的に出品が認められるもの

引用元:

https://sellercentral.amazon.co.jp/help/hub/reference/external/201730840

またFBAよりも規制の緩いAmazon全体のガイドラインを見ても、「制限対象商品」カテゴリの「通貨、硬貨、および現金同等品」のページに以下の出品禁止商品例が挙げられています。

出品禁止商品例

以下に該当する商品をAmazonで販売または出品することは禁じられています。

引用元:

https://sellercentral.amazon.co.jp/help/hub/reference/external/G200164450

 ※本題と無関係な一部項目は省略した

これセーフなの?????????????????

 

一般に東京メトロ24時間券を含む企画乗車券は乗車券類、すなわち有価証券の一つとみなされていると思われます。思いっきり規約に抵触しているようにみえるのは気のせいでしょうか。

 

確かにAmazonには以下の例のように「お食事券」などと称するものも販売されていますが、①特定企業の店舗での飲食にしか利用できない、②つり銭は出ず換金もできない旨明記されている、などの点から24時間券と同一視することは難しいです。

「(5000円分)【くら寿司全店で使える】お食事券 ギフト 贈り物 」

https://www.amazon.co.jp/5000%E5%86%86%E5%88%86-%E3%80%90%E3%81%8F%E3%82%89%E5%AF%BF%E5%8F%B8%E5%85%A8%E5%BA%97%E3%81%A7%E4%BD%BF%E3%81%88%E3%82%8B%E3%80%91%E3%81%8A%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E5%88%B8-%E7%88%B6%E3%81%AE%E6%97%A5-%E3%81%8A%E4%B8%AD%E5%85%83-%E3%82%AE%E3%83%95%E3%83%88/dp/B085HBHYN9/ref=sr_1_3?keywords=%E3%81%8F%E3%82%89%E5%AF%BF%E5%8F%B8&qid=1669716267&qu=eyJxc2MiOiI0LjU1IiwicXNhIjoiMy41NSIsInFzcCI6IjIuOTYifQ%3D%3D&sr=8-3

 

それどころか24時間券は(当然ながら)駅発売分と払い戻し関係のルールは同一なため、事実上Amazonで買った商品をメトロの多くの駅で換金可能なことが明記されてしまっています。

Amazon販売ページ(URLは本ページ上部に記載)より引用。

 

有価証券をデリプロやヤマトで配送していいのか?

次に気になったのがこちら。

FBAで出品された24時間券はそのほとんどがヤマト、日本郵便、デリプロのいずれかで発送されると考えられます。日本郵便はともかく他社で発送された場合気がかりな点が残ります。

デリプロ発送の場合

とにかく輸送品質が悪すぎます。最低3万円の有価証券がAmazonのクッションしない封筒に入れられ、デリプロ品質で下手すると雨ざらしの置き配などされた日にはたまったものではありません。

ヤマト発送の場合

下記ページによると、クロネコDM便、宅急便、ネコポス*2のいずれも有価証券は引き受けられない旨が記載されています。なんらかの特例がない限り24時間券をヤマト運輸で発送するのはヤマトの約款に違反している可能性があります。

faq-biz.kuronekoyamato.co.jp

www.kuronekoyamato.co.jp

faq.kuronekoyamato.co.jp

メトロの缶詰アネックスでは…

しかし東京メトロの自社通販サイト「メトロの缶詰 ANNEX」では、記念デザインの24時間券をヤマト運輸で発送すると明記しています。ヤマト運輸との合意のもと有価証券を送る方法があるのかもしれません。

東京メトロプレスリリース「「2022 ローレル賞受賞記念」東京メトロオリジナル 24 時間券を発売します!」

https://www.tokyometro.jp/news/images_h/netroNews221128_79.pdf

 

有効期限について

Amazon販売分の24時間券は有効期限を印字してから客の手元にきっぷが届くまで相応のタイムラグが生じます。この問題については販売ページに以下の記述があり、

※発送時に有効期限まで6か月以上の商品をお届けいたします。

販売までのラグを見込んで長めの有効期限を印字した券を納品し、適宜販売期限を管理していると考えられます。Amazonで購入した券は若干有効期限がおまけされている可能性が高いわけで旅客有利といえば有利ですが、販売期限の管理が面倒な気もします。

二重の返品ルール

執筆時点の販売ページには、「本商品は返品・交換は承ることができません。」および「返品ポリシー: 2023年1月31日まで返品可能です」と相反する返品ルールが記載されています。

Amazon販売ページ(URLは本ページ上部に記載)より引用。

このうち後者はAmazon.co.jpが発送する商品に関する、「2022年11月1日から12月31日の期間に購入したAmazonが発送する商品は、2023年1月31日まで返品が可能です。返品の際は、このページに記載されている返品の条件が適用されます。」が適用されていると思われます*3

客に有利な方向にルールが曲げられているため特段大きな問題はないのでしょうが、Amazonに出品する以上プラットフォーマーの気まぐれには逆らえないことがわかります。

 

まとめ

今回の施策はきっぷの販売方法の多様化が求められている時代における斬新な取り組みの一つだと思います。長期的にはMaaSやそのツールとしての紙/スマホQR乗車券などの展開が望ましいのですが、磁気券という足枷がある現状で利便性を追求する方法として(プラットフォーマーに手数料を吸われてでも)大手通販サイトで磁気券を販売するというのは率直に面白い発想ではないでしょうか。

とはいえこの販売方法には首を傾げる点もあるわけで、総論賛成各論反対、または揚げ足取りのような内容になってしまうのは心苦しいのですが、今回浮き彫りになった問題点をクリアした磁気券の販売手法を編み出して(短期的な)利便性向上の取り組みを続けていってほしいところです。

 

*1:業務用のAmazonビジネス含む

*2:「宅急便で送れないものは、ネコポスでも送ることができません。」とある。

*3:年末の各種セール対応?