国内唯一の寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」のシャワーがツイッターで話題になりました。まあツイッターで話題になるのは8割方炎上ネタですから今回も、
7/29発下りサンライズ、瀬戸編成のシャワーカード先頭に並んでたキッズが9枚買って列そこそこ長かったのに大半が買えず
— さめはだおもち (@Mochihada_Shark) 2022年7月29日
やらかしたお子様がいたようです。
ただこのお子様がいなくともサンライズのシャワーカードはデビュー当初から供給が全く足りておらず、近年の東京駅ではほぼ毎日サンライズ入線前からシャワーカード待機列が形成されています。
この記事では、サンライズ瀬戸・出雲のシャワーカードの販売枚数やその理由について述べた上で、シャワー不足を解決する方法はないかについて検討していきます。
サンライズ瀬戸・出雲のシャワー利用可能人数
シャワーカード販売枚数
結論から言うと、1列車あたり20枚です。ただし瀬戸編成、出雲編成それぞれシャワー室があるため、両列車合わせた販売枚数は40枚となります。
(※以下で述べる人数、枚数等は特記無き限り1列車(7両)分の数を指します)
これとは別に1列車6室あるシングルデラックス(A個室)には専用のシャワー室があるため、1列車でシャワーを利用できるのは26人ということになります。
シャワーカード争奪戦の倍率
サンライズ瀬戸・出雲が満席時の定員は1列車158人*1です。ただし前述の通りシングルデラックス利用者は争奪戦に参加しないため参加者は最大152人とすると、倍率は7.6倍、勝率は約13.2%となります。
ちなみに冒頭のお子様が9枚お買い占めになった列車ではお子様ご本人を含めても12人しか購入できなくなるため争奪戦の倍率は12.7倍、勝率は約7.9%まで悪化します。空席があれば多少緩和されますが夏休み金曜夜の下りのため満席近いことは想像に難くなく……やっぱクソガキですわ。
シャワー定員の制約要因
シャワー室の回転率
参考文献によると、以下のような想定からシャワー室の利用可能人数を20人と決定したとされています。
- 時間あたりの回転率…4 人/h (キャンプ場等を参考として決定)
- 有効時間帯…5 h (22時~25時+その他の時間2時間程度)
水タンク容量
サンライズのシャワー20人分の水量は1200リットルを要します。サンライズは運行中に補水を行わないため、始発駅発車時点で一晩分のシャワー用水を全て積載し、さらに使用後の汚水も終点まで抱え込む必要があります。狭い車内に清水汚水の2つのタンクを設置する必要があったことも、シャワー室の定員を決定する要素になったことは間違いありません。
車両側でシャワー不足を解決するのは困難
現行の285系をそのまま用いた小手先改良、285系の改造またはいつの日か現れるであろう新型車両を前提とした方法、その他いろいろ考えてみました。
…が、現実的な定員増はせいぜい数人にとどまり、お風呂に入れるかは運次第な状態の解消にはほど遠いです。
正攻法でシャワー室を1両1ヶ所(1列車7両に7室)に増やせばほぼ全員が利用することもできるでしょうが、このコスト&定員減による減収をどこで吸収するかと考えると…。
↓いちおう思いついた小手先の対策を書いておきます。
回転率を上げる系(水問題は別途検討)
・気にせずカードを売りまくる(←降りるまでに使えなかったとクレームくるやつ)
・A個室用シャワー室を一般客数人にも開放
水をなんとかする系(回転率は別途検討)
・汚水を溜めず浄化して排出(←小型の浄化装置でないとスペース節約にならない)
○米原で運転停車中に補水して朝シャン枠を追加(←まだ現実的)
床面積なんとかする系
・脱衣所を廃止
・いっそ大浴場にする(←)
結局エキナカや周辺施設へ誘導するのが現実的
ありきたりな結論ですが、スペース、水量、サービス(アメニティ等)に強い制約のかかる列車内で全員にサービスを提供すること自体に無理があります。
駅周辺の温浴施設、シャワー併設のジムや系列ホテルの大浴場(高松駅前のJRクレメントイン高松など)と提携し、サンライズの乗客向けに無料か安価な優待サービスを設けるのが最も手っ取り早いでしょう。
東京駅南側への自由通路建設(←予定地が東京駅と東京中央郵便局を結ぶレンガ通路と丸かぶりしているように見えるのは気のせいでしょうか…?)や品川駅*2再開発に合わせてピッタリな施設ができるか期待したいところです。
参考文献
1)「JR西日本285系特急形寝台電車」鉄道ピクトリアル1998年7月号、pp.67-72
2)鶴通孝 ; 中井精也「列車追跡シリース(477)--サンライズエクスプレス 明日へ向かって走れ!」鉄道ジャーナル1998年10月号、pp.16-31
3)鶴趣孝「サンライズエクスプレス こぼればなし」同上、pp.36-37