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内房線・外房線の系統分離は間違いだったのか

2021年3月のダイヤ改正で、JR東日本千葉支社ではE131系が導入され、日中帯の内房線外房線は千葉近郊とローカル区間の系統分離が行われました。

今更感はありますが、この記事では現行の運転系統について簡単におさらいしたあと、系統分離の真の狙いを推測することで系統分離の是非について振り返ってみたいと思います。

 

 

1. 2021年現在の日中帯の運転系統

内房線千葉近郊

内房線の千葉近郊は君津発着の総武快速線直通列車が毎時1本、普通が毎時2本(木更津、君津行き各1本)運転されており、千葉口では概ね20分間隔で運転されています。

快速通過駅*1や木更津以遠*2では約40分のダイヤホールができますが特に救済措置はありません。

外房線千葉近郊

外房線の千葉近郊は京葉線直通列車が毎時1本と普通列車が毎時3本運転されています。

京葉線直通列車は京葉線内快速運転、外房線内各駅停車*3の上総一ノ宮発着です。上下とも蘇我駅で前述の内房線君津行き総武快速と対面接続しており、千葉駅から外房線方面への乗客にも充分*4配慮されています。

普通列車は上総一ノ宮行き、茂原行き、大網から東金線直通の成東行きが毎時1本ずつ走っています。

千葉口では内房快速→京葉快速連絡と普通列車を合わせて実質15分間隔で運転されています。

内房線外房線ローカル区間

両線のローカル区間は、内房線木更津ー外房線上総一ノ宮間を直通する普通列車が約1時間間隔で運転されています。内房線は君津で総武線直通快速に、外房線は上総一ノ宮で京葉線直通快速に対面接続しており、系統分離区間を跨ぐ利用客にある程度配慮されています。

多くの列車が新型車両(E131系)の2両編成で、ワンマン運転が行われています。

まとめるとこんな感じ。

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細かいことはWikipediaを見てください

 

2.系統分離が行われた理由

ローカル区間をワンマン化したい

ローカル区間では2両編成の新型車両の投入と同時にワンマン化が実施されました。人件費削減のためならばガラガラの線区にもテレビの付いたピカピカの新車を入れるあたりに代々木の涙ぐましい努力が感じられます。

輸送量の格差が大きい

内房線外房線の千葉近郊は現在も乗客が多く、総武線直通快速が停車する全駅が1万人以上(コロナ前)の乗降人員を抱えています。一方でローカル区間は非常に閑散としています。

需要の大きく異なる区間を列車が直通していたことで、閑散区間にガラガラの8両が走る一方千葉駅まで4両が顔を出すこともあり、輸送力の適正化が必要でした。

鎌取駅の例

21年改正では6両の東金線直通と10両の京葉線車両間合い運用を除くほとんどの千葉発着普通列車が8両編成で運転されており*5、千葉近郊もローカル区間も需要に見合った輸送力になっています。

千葉近郊の輸送障害を減らしたい

千葉以遠の各線は非常に輸送障害が多く、千葉市内で少し風が吹いていれば内房線が強風で遅れ、少しモヤがかかっていれば成田線が濃霧で遅れている…ということが日常茶飯事です。

とりわけ内外房線のローカル区間は海沿いやガケ沿いなど自然災害に弱い区間を走ることが多く、系統分離によって千葉近郊の列車の遅れの削減が見込まれます*6

 

3.系統分離の本当の狙い?

私は改正発表を見た時点ではこの変更を「可もなく不可もなし」程度にしか思っていませんでしたが、改正後しばらくしてこの施策が大成功だったと確信しました。その理由は、「千葉口の8両統一でダイヤ乱れからの回復が迅速化したから」です。

 

系統分離以前の運用

かつての内外房線にはこんな運用がありました。

内房線178M〉館山1444発→千葉3番線1644着(6両)

外房線274M〉安房鴨川1453発→千葉3番線1652着(4両)

↓連結

内房線183M〉千葉3番線1713発→木更津1751着(10両)

(2020年3月改正)

 

夕方の千葉口に平気で4両が突っ込む点もかなりクソですが、さらに大きな問題があります。もし連結するどちらかの列車が遅れたらどうなるでしょうか?

海風と野生動物と自然に溢れた区間を100km近く走ってくる列車はどちらもしばしば遅れます。併結相手が来なければ相方は待ちぼうけです。よりによって内房線用の線路が1.5本くらいしかない千葉駅で

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千葉駅の配線略図。下から順に1~10番線。右下に伸びる複線が内外房線、左上の複線が総武快速線。引用元は記事末尾に掲載。

千葉駅の内房線ホームは3・4番線、外房線ホームは5・6番線ですが、いずれも総武快速線とホームを共用しています。しかも総武快速線と房総各線は別の輸送指令が管轄しており、重要性の高い総武快速線を遅らせることは避けなければなりません。

かつての千葉指令さんは、支社の拠点駅でありながら肩身の狭い千葉駅で、遅れたり遅れなかったりしている別々の線区の列車と出区車両をうまく組み合わせ、総武快速線を邪魔しないように極力短時間で折り返させ(ようとし)ていたのです……。ムリゲーです。

 

系統分離後はどうなったか

内房線外房線の千葉口はほぼ全ての列車が4+4の8両に統一され、千葉駅内外房ホームでの分割併合は廃止されました*7

多少列車が遅れても千葉駅ではやって来た8両編成の列車をそのまま送り返すだけ、たまに来る6両は東金線に向かわせるだけになりました。系統分離で運用の差し替えも容易になり、ダイヤの柔軟性、輸送障害からの回復力は大きく改善したと言えます。

 

その他もろもろ・まとめ

総武本線でも同様の系統分離をする可能性は0ではないと思いますが、総武本線成田線は千葉口でも日中6両(※209系置換え後は中編成ワンマン運転が可能)で間に合っており要員はあまり変わらないことや系統分離に適した構造の駅がないことから可能性は低そうだなと思ってます。

もっとコンパクトな文章書けるようになりたい

 

参考文献

JR東日本千葉支社「2021年3月ダイヤ改正について」

https://www.jreast.co.jp/press/2020/chiba/20201218_c01.pdf

・配線略図の画像引用元

www.haisenryakuzu.net・千葉支社時刻表、普通列車編成両数表ほか

 

 

*1:巌根のみ

*2:君津のみ

*3:要は海浜幕張から各駅停車なのだが、なぜか終点まで頑なに快速と案内している。蘇我で電車の行先を見ると「[快速]外房線内各駅停車」とか書いてあったりする。

*4:千葉駅の放送・電光掲示板だけでなく、千葉駅到着前の総武線の車内放送でも接続の案内が徹底されている。

*5:21年改正の下りダイヤでは早朝深夜に3本だけ6両編成あり。4両編成は完全に消滅した

*6:会社側も労働組合との団体交渉でこれを理由の一つに挙げています。参考→ ttps://doro-ch●ba.org/nikkan_dc/n2016_07_12/n8216.htm

*7:労組資料: ttp://www.jreu-ch●ba.jp/library/5ae7dc3ada3b1e50464226fd/5fe4439e51b0b2a2792c9ed3.pdf